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2014年12月 の 投稿一覧

2014年12月07日

商標「遠山の金さん」

 前回のブログ に、太宰府天満宮が出願した「菅原道真」という商標が、以前は登録されたのに、今回は公序良俗(公の秩序・善良の風俗)に反するとして(商標法4条1項7号違反)、登録されなかったということを書きました。
 その理由は、周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により強い顧客吸引力を有し、その人物の郷土やゆかりの地においては、住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれ、地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情が多くみられるので、そのような人物名を使用する権利を一私人にのみ認めることはできないということです。

 では「遠山の金さん」ではどうでしょうか。手元の広辞苑を見ますと、「とおやま‐きんしろう【遠山金四郎】」の項に「江戸後期の江戸町奉行。左衛門尉。名は景元。下情に通じ、名奉行をもって聞こえ、『遠山の金さん』として親しまれ、歌舞伎狂言や講釈などに脚色。( ~1855)」とあります。
 広辞苑にこのように記載されているのですから、「遠山の金さん」も、周知・著名な歴史上の人物名として、商標法4条1項7号に反するとして登録が認められないようにも思えるのですが。。。

 テレビ番組の「遠山の金さん」などを制作した東映が有する登録商標「遠山の金さん」に対して、パチンコ遊技機メーカーのサンセイアールアンドディ(以下「サンセイ」)らが登録無効が求める事件がありました(無効2012-890075)。

 この事件では、請求人(サンセイら)・被請求人(東映)ともいろいろと主張していますが、最終的には、特許庁は、以下のように認定しています。

 「遠山(金四郎)影元」とは、江戸時代の旗本で、天保年間に江戸北町奉行、後に南町奉行を務めたとされる実在した人物であり、同人の墓(東京都豊島区)や住居跡(東京都墨田区及び港区)のほか、北町奉行所跡(東京都中央区)やゆかりある地とされる「日本大正村」(岐阜県)及び「信州遠山郷」(長野県)に関するインターネット情報等においては、同人を紹介する際に、その略歴等のほかに、例えば、「小説・ドラマの『遠山の金さん』などでその名を知られる」、「ドラマや芝居でお馴染みの『遠山の金さん』こと『北町奉行遠山金四郎』」、「テレビドラマや映画でお馴染みの名奉行『遠山の金さん』」のように、看者の理解を容易にすべく、テレビドラマ等を通じて一般に広く知られた同人をモデルとする架空の人物である「遠山の金さん」を引用することが少なからず行われているというのが実情である。
 これに対して、「遠山の金さん」とは、「遠山(金四郎)影元」の死後、同人をモデルとして、遅くとも明治時代の末ころから講談、歌舞伎、書籍類等を通じて作り上げられた架空の人物であって、昭和の初期から30年代までは、主として時代劇映画の主人公名として、その後は、時代劇テレビ番組、特に被請求人の制作に係るテレビ番組のタイトル名やその主人公名として、一般に広く知られるに至っており、その状態は、本件商標の登録出願時はもとより、本件商標の登録査定時を経て現在に至るまで継続しているものと認められる。
 「遠山の金さん」の文字からなる本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、これを歴史上実在した人物である「遠山(金四郎)影元」を表したものとして看取、理解するというよりは、むしろ時代劇、特に被請求人の制作に係るテレビ番組のタイトル名やその主人公名を表したものとして認識するとみるのが相当である。
 特許庁は、以上のように認定し、商標法4条1項7号に該当するとはいえないとしました。

 この審決は、2014年9月18日のものですが、実は、この事件の請求人(サンセイら)は、以前より「CR松方弘樹の名奉行金さん」というパチンコ機に関して、東映らから著作権及び商標権を侵害するとして裁判が起こされていました(一般紙でも報じられていましたので、皆さんご存知かもしれません)。そこで、サンセイらが商標権の登録無効を求めたのですが、無効にならなかったというのが今回の審決です。
 裁判では、サンセイらが著作権侵害・商標権侵害するという判決が出されましたが、サンセイらはこの東京地裁判決に不服であるとして控訴しています。
 こちらの行方も気になります。