代表・弁理士 三田 康成
特定侵害訴訟代理業務付記
2014年11月 の 投稿一覧
2014年11月23日
前々々回のブログ に、「営業秘密」の「秘密管理性」に該当するか否かの判断基準が以前に比べて緩和されてきており、以前よりも権利者に有利になってきているようだということを書きました。
また前回のブログ に、特許の進歩性の判断レベルが以前に比べて下がってきているようだということを書きました。
意匠につきましても、図面の不整合に対する拒絶理由通知が減ってきています。ただし拒絶理由が通知されなかったから、シメシメと思っても、いざ権利行使するときに「意匠が特定できないから権利行使できない」とされる可能性があります。不整合のない図面を作成することが、出願人・弁理士に課せられています。
商標も登録しやすくなっているのかというと、こんな審決がありました(不服2013-9260/不服2013-9261/不服2013-9262/不服2013-9263/不服2013-9264/不服2013-9340/不服2013-9341)。
太宰府天満宮が出願した「菅原道真」という商標です。太宰府天満宮が、以前「菅原道真」という商標権を持っていたのですが(登録2393636号/登録2352646号/登録2431723号)、権利を消滅させてしたため(おそらく登録維持年金の納付忘れ)、再び出願し直したという案件です。
これにつきましては、以前は登録されたのに、今回は公序良俗(公の秩序・善良の風俗)に反するから、商標法4条1項7号違反であるとして登録されませんでした。
周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により強い顧客吸引力を有し、その人物の郷土やゆかりの地においては、住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれ、地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情が多くみられるので、そのような人物名を使用する権利を一私人にのみ認めることはできないとされています。以前はその取り扱いが曖昧でしたが、平成22年に明文化されました。
今回の「菅原道真」に対して、特許庁は、太宰府天満宮といえども、全国各地にある天満宮のひとつに過ぎず、そういった数ある天満宮がお祀りし、地域振興や観光振興に活用されている「菅原道真」を、一私人たる太宰府天満宮の登録商標として認めることはできない、としました。
商標を選択するときは、このような点にもお気をつけください。